「いいとき生まれた!昭和30年代」

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 第99号 おはつ!


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        いいとき生まれた!昭和30年代  第99号     


                    2008. 9. 16     


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  通勤するのに、
  同じ服を続けて着ていく人は、
  あまりいないと思います。
  特に私みたいな女性は、
  昨日と同じ服など着ていったら、
  外泊したのか?とあらぬ疑いをかけられかねません。
  
  
  え?
  それは若い女性の場合だけですから、
  ひとみさんはもう心配ないでしょうって?
  ま、まあそれにしてもですね、
  どうしたのかと思われることには、
  変わりありませんでしょ!
  
  
  でもでもでも、思い出してください。
  昔は、同じ服が続いても、
  別に違和感のない社会だったってことを。
  贅沢ではなかったことの他に、
  お出かけ着と普段着の区別が厳然としていたこともあったと
  思います。
  むしろ、普通のお勤めの女性が、
  毎日とっかえひっかえ違う服を着てきたら、
  逆に金遣いが荒い女性と見られてしまうことも
  あったのではないでしょうか。
  
  
  それは、私服の小学校に通う私たち子供も、
  同じでした。
  もちろん小学校への通学は普段着ですが、
  それにしたって、
  自分も含め、
  毎日変えてくるような子はいませんでした。
  
  
  さすがに、夏だけは例外ですが、
  汗をかかない季節は、
  数日間は同じ服を着てくるのがあたりまえ。
  服を汚す男の子のほうが、
  むしろ着替える頻度が高かったかもしれません。
  
  
  小学校の時は、
  毎週日曜日の晩になると、
  「来週は何を着ていくの?」
  と言って、母に服を出してもらっていたくらいですから、
  我が家の場合は、
  1週間交代で、服を変えたということですね。
  
  
  私が小学生の時ですから、昭和40年代になってますが、
  これは別に我が家が特別だったわけではなく、
  クラスメートも、
  短くて3日くらい、
  長い子は10日くらい、
  同じ服を来て登校してきてました。
  
  
  だから、誰がどんな服を持っているかなんて、
  自然に覚えてしまいます。
  そんなですから、
  新しい服を着てくれば、
  すぐわかります。
  
  
  それもあったのか、
  新しい服を着てきた人に、
  必ずすることがありました。
  ポンと服を軽くたたいて、
  「おはつ!」


  もちろん、自分が着ていけば、
  やられることに。
  あなたもやりましたか?
  

  全国区の習慣かどうかはわかりません。
  これまでも、土地によって、
  かなり違うことが、たくさん出てきましたものね。
  ただ、愛知出身の母もやっていたそうなので、
  東京だけの習慣ではないと思います。
  

  さらに、これは、
  一番初めにすることに、
  価値がありました。
  誰よりも早く気がついたということになるからでしょう。
  2番手、3番手では遅いのです。

  
  ですから、服だけではなく、
  くつでもカバンでも、
  とにかく新しいものを見つけたら、
  即座に「おはつ!」
  とやりました。
  
  
  靴なんて、履いてる足元にかがみこんで、
  おはつ!とやるのですから、
  そこまでしてやらなくてもって、
  今は思いますけど。
  
  
  もっとも、
  本当におはつの時はいいのですが、
  小物など気がつきにくい物だと、
  1回目には気がつかず、
  2回目くらいに
  「おはつ!」
  とやってしまったり、
  逆にやられる、なんて場合もあります。
  
  
  「もうおはつじゃないよ。」
  そんな時は、
  言うほうも、言われるほうも、
  妙にむなしさだけが残るものでもありましたけど。
  
  
  だからこそ、
  気がつきにくいものほど、
  一番に見つけたときの価値も違いましたけどね。
  ともかく、「おはつ!」は、
  新しいものを見つけた時の儀式として、
  欠かせないものになってました。
  
  
  物が豊かになって、
  新しいものが珍しくもない世になっていき、
  おはつの価値がなくなっていったのか、
  単に大きくなっていったから
  やらなくなっただけなのかはわかりませんが、
  とにかくいつの間にかしなくなりました。
    
  
  でも、これって、
  やっても、やられても、
  嬉しくなれるし、親しみも増す、
  ほほえましい習慣だったなあ、
  と思うのです。
  今でも残っていたら嬉しいけれど、
  残っていそうもないですね。
 
  
  私たち以前の世代から見たら、
  私たちも、充分贅沢させてもらってると
  言われてしまいますが、
  物に不自由をしたという経験のない私たちだって、
  今の子から比べたらかなり質素な生活が普通だったんですよね。
  
  
  今の子供を見ていると、
  物をもらって喜ぶことはあっても、
  その喜びが私たちの頃とは、
  ちょっと違う気がします。
  ありがたみの差というか。
  
  
  私たちは、
  「足りなくはないけれど、
   必要以上にあるわけでもない」
  その兼ね合いが、本当に絶妙な位置にいたと思います。
  
  
  満腹ではなく、
  腹七、八分目の贅沢というところでしょうか。
  体にいいところですね。
  
  
  同じ服を数日続けて着ていっても普通である社会は、
  質素であることの他にも効用があります。


  だって、何を着るかを悩む回数が減るではないですか。
  どう考えたって、そっちのほうが気楽。
  この点だけでも、今の人は余分な気を使ってるわけだから、
  それだけでもストレス度は違いますってば。
    

  (ーそんなことを思うのは、ひとみさんだけですー
   −ひとみさんって、女を捨ててますねー
   ーそれは、ただ不精なだけでしょうー、
   そんな声があちこちから聞こえたような…気のせい?)
  
  
  

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    あれこれ後記
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  今回は、いつもの間隔で出せた気でいたら、
  1ヶ月たっていましたのね。
  大事な用も野暮用も共に忙しくて、
  時間に自分が追いついていませんな。
  

  父が亡くなって、もうすぐ百か日の法要を迎えます。
  父は、食べ物を誤って肺に入れてしまうことで起きる、
  誤嚥性肺炎で亡くなりました。
  飲み込む力が衰えてくる老人に多く、
  老人の死亡原因としても高いものですが、
  4年前の癌には打ち勝てたのに、
  本当に人の命は、寿命次第です。

  
  救急車で運ばれ、
  5日間の集中治療室を経て、
  一般病棟に移り、
  その後2ヶ月間、
  一進一退、頑張ってくれましたが、
  亡くなる20日前ほどからは、
  意識はあるものの
  話ができなくなり、
  最後の4日間は意識もなくなりました。


  意識がなくなったのが、
  下の姪が修学旅行に行く前日で、
  姪も心配しながら行ったのですが、
  その間は、意識がないながらも、どうにか持ち越し、
  まるで、旅行から帰ってくるのを待ってあげたように、
  帰ってきた晩の翌早朝に、
  あっけないくらい簡単に逝ってしまいました。
  ですから、立ち会えたのは、
  病院に泊り込んでいた母と私だけでした。
 

  と、しめっぽい話をしてしまいましたが、
  冗談好きだった父らしく、
  悲しみの中にも、笑える要素が入り込んでくるのですよ。  
   
  
  父が、まだ言葉が出せた頃です。
  病室に行くと、
  いきなり人の顔を見てふざけた調子で、
  「ば〜か」
  と言うのです。


  いきなり、なに〜?
  と思ったのですが、
  結果的に、この「ば〜か」が、
  父が私に向けて残した、
  最後の言葉らしい言葉ということになったのです。
  
  
  よく、
  「父の最期の言葉を胸に秘めて、
   生きていきます。」
  なんて言う人がいますが、
  私の場合は、秘めるというより、
  「隠して生きていきます。」
  というところです。
  
  
  父は夢でも、ふざけてます。 
  父は、母や妹たちなどの身内はもちろん、
  ご近所さんの夢にも登場しています。
  上の姪などは、もう何度も見ているそうです。
  みんなの夢に出てくる父は、
  元気な5,60代くらいの頃の感じで、
  顔もふっくらしてニコニコしているそうなんですが、
  私が唯一見たのはこんな夢だけです。


  2階にいると思っていた父がいません。
  そこには、父の字で書き置きメモが。
  「築橋郵便局へ行ってきます」
  それを見て、
  そんなところへ1人で行けるのかを心配しているという、
  それだけの夢。
  だけど、築橋郵便局って、いったいどこさ。
  しかも登場したのは、父の字だけだし。

     
  そして、冗談みたいな話は、
  まだ続きそうなのです。


  仏壇を買ったので、49日の法事の時、
  葬儀のときにお世話になったお坊さんに、
  開眼供養をしてもらいました。
  分家で菩提寺もないため、
  戒名だけは、父が生まれた時にも名前をつけてくれた、
  本家の菩提寺からもらったものの、
  そこは愛知で遠く、檀家になるのも大変なので、
  こちらでの葬儀や法事は、
  葬儀会社に紹介してもらったお寺のお坊さんに、
  お願いしています。
  本家の菩提寺は浄土宗、そのお寺は天台宗と、
  宗派は違うんですけど、
  共通項もあるので、そこまではこだわらないことに。
  

  別にそれがいけないわけではないでしょうが、
  仏壇の上の方が、
  ろうそくの熱で焦げてきてしまいました。
  大きなものは置けないので、
  小さな仏壇でもあるのですが、
  仏壇の大きさに対して、
  担当者が選んだろうそく立てが、
  大きいせいもあると思います。
  向こうが選ぶのだし、
  大手の会社だから、
  そこは大丈夫なようになってるのかと思ってたら…。  
  
 
  ともかく、放っておくわけにもいかないので、
  修理してもらうよう依頼。
  買ったばかりでもあるし、
  ろうそく立ての件も言ったせいか、
  その担当者も、
  安く丁寧に治してもらえるところを探してくれて、
  その結果、
  国宝の修理も扱う職人さんに、
  安く治してもらえることになりました。


  さすが、そういう職人さんともなると、
  職人魂が許さないのか、
  表面を治すだけのいい加減な治し方ではなく
  きちんと根本から直させてほしいと言ってきたそうです。
  

  もちろん、こちらも望むところで、
  そこまではいいのですが、
  仕事が丁寧になる分、時間がかかり、
  出来上がり予定日が、
  百か日の法要当日になってしまったというではありませんか。
  この会社の担当者、
  使えるんだか使えないんだか、
  よくわかりません。
  
  
  一方、早々に仏壇を修理に出すことになってしまって、
  祀ったばかりの阿弥陀様と父のお位牌は、
  仏具と共に、黒盆の上に並べてあるだけの、
  野宿のようなしょぼい状態。

  
  母は、法事に備えて、
  少しでも見栄えをなんとかしようと、
  お線香の入っていた桐の箱を、
  一段高い台にしてお盆にのせ、
  そこに阿弥陀様とお位牌を並べました。
  さらに、阿弥陀様がほこりにならないように、
  買った時に入っていた箱を立てて、
  その中に祀りました。
  

  しかし涙ぐましい努力の割には、
  ただの野宿から、
  ダンボールホームレスに変わっただけのような気がします。
  思わず、
  「もうしわけございません!!!」
  と手をついてしまいたくなる、
  切なさでございます。
  

  この、しょぼさが際立つ前で、
  お坊さんが真面目な面持ちでお経を読み、
  みんなが喪服で正装して、
  神妙に法事に参列することを想像すると、
  どちらかというとコントの世界になりそうな…。  
  

  仏壇じゃ、借りるってわけにもいかないし、
  お坊さんも、 
  「こんな形で読経するのは初めてだ。」
  と思うかも。
  間の抜けた法事にならないように、
  父が職人さんにスーパーパワーを吹き込んで、
  間に合わせてくれないもんだろうか。  
    

                             (ひとみ)

  
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