「いいとき生まれた!昭和30年代」

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第8号 引き売りのパン屋さん


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         いいとき生まれた!昭和30年代  第8号

                 2004. 9. 3


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  ロバのパンやさんというのは、本当にロバに台車を引かせてきたらしいけれど、
  私の知ってるパンやさんは、おじさんが、箱型の台車を引いてきました。
  
  ジェリー藤尾を丸顔にしてアクを抜いたような人で、
  今考えると、おじさんと呼ぶには、若かったような気がするけれど、
  子供から見たら、大人は皆おじさんおばさんです。
  
  こういう引き売りが住宅にやってくると、
  子供たちはお小遣いを握り締めて、集まってきたものです。
  
  

  あるとき、妹たちを医者につれていくため、
  母が出かける仕度をしていました。
  当然、関係のない私も連れて行くつもりでいましたが、
  その日の私は、もう一人できちんとお留守番ができるような
  気がしていたのです。
  そこで、母にお留守番ができるから待ってると言いました。
  母は半信半疑ながらも、その申し出に私を残して、
  妹たちをつれて出かけていきました。
  
  3人ががやがや出て行って、その話し声が聞こえなくなったとき、
  急にやってきた静寂…。
  しーーーーーん。
  皆が出かけて、まだ5分もたたないというのに、
  その静けさに、私は急に寂しくなってきて、泣き出してしまったのです。
  我ながら情けないやつです。
  
  自分から言ったのだから、追いかけていくわけにも行かず、
  しばらく泣いていると、庭のガラス戸をトントンと叩く人がいます。
  やばい、大見得をきった手前、
  人に見られて泣いていたことを母に告げられてはいかん!
  あわてて涙を拭いて出て行くと、
  そこにはいつものパン屋のおじさんが、立っていました。
  引き売りのおじさんは、いつもうちの棟の前に台車を止めて売るので、
  個別に家まで来ることはありません。
  
  不思議に思って、戸を開けると、
  「今そこでお母さんに会って、これ食べて待ってなさいって
  言ってたよ」
  と、メロンパンを差し出しました。
  
  おじさんは当然、涙のあとを見破ったでしょうが、
  子供の心理がわかるのでしょうか、
  そのことには一言も触れず、
  「おかあさん、もうすぐ帰ってくるからね。
  いい子でお留守番してなね」
  と言って去って行きました。
  
  私は、さっそくそのメロンパンにかじりつきました。
  食べているうちに、泣いていたことなど、
  すっかり忘れてしまいました。
  なにせ、子供は単純ですからねー。
  
  そして、母たちが戻り、
  「おじさんがメロンパン届けてくれたでしょ?」
  と言われたときには、
  妹たちのうらやましそうな顔を尻目に
  「うん、食べた。」
  と何事もなかったように答えておりました。
  
  今考えたら、メロンパンのおかげで、
  はじめてのお留守番ができたってのは、
  ちょっと複雑な思いがありますが…。
  
  母にすれば、ちょうど住宅にくる途中だったパン屋さんに会ったので、
  一人でお留守番ができるようになったご褒美にと、
  いつもはお小遣いで買えないメロンパンを奮発して、
  届けてくれるように頼んだのでしょう。
  (もしかしたら、「奴は今ごろきっと泣いているだろうから、食べ物で釣って
  おこう」と見透かしていたのかもしれませんけど。)
  
  でも、私が、今でもなんとなくメロンパンが好きなのは、
  このことがあったからだろうか、とふと思うことがあるのですよ。
  
  しかし、いつも引き売りにくる人とはいえ、
  子供が家に一人でいることを警戒心なく告げられて、
  こういうことをお願いすることができたのも、
  時代ならではのことでしょうか。
  
  この程度のことにも、警戒心を前において考えなければいけなくなった今の時
  代、やっぱりどこかゆがんでしまったのでしょうね。
  
  ちなみに一日十円の私のお小遣いで買えた中で好物だったパンは、
  ねじりパンという、ねじり状の揚げパンに、砂糖をまぶしたもの。
  これはメインの蒸しパンより好きで、よく食べてました。

  玄米パンも来ました。
  「玄米パンのほやほや〜」と言いながら。
  口が回らない頃の私は、「玄米パンのこやこや〜」と言っていたそうですが。

  他にもいろいろな引き売りが来ましたが、
  こちらも、追々に機会を見てお話していきましょう。  



  
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    編集後記
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  ◇ロバのパン屋さんて、今もあるようですね。
   皆さんの地域には来てますか?

   私が語る昭和30年代って、あくまでも東京下町の一角の、
   庶民の生活です。
   前号で触れましたが、昭和40年代に隣の区に引っ越しただけでも、
   自然環境はもとより、遊びの習慣などにも違いが感じられました。
   だから、同じ昭和30年代でも、日本全国ではいろいろな違いが
   あるでしょう。
   
   皆さんの昭和30年代の思い出話も、いつでもお寄せください。
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   (私の方でも、どのメルマガに対してのメールかがわかるので、
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   そこに記入して、普通に送信するだけでメールは届きますから、
   思い出したときには、いつでもお気軽お手軽に。


                             (ひとみ)


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