「いいとき生まれた!昭和30年代」

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第63号 木と土があった街


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        いいとき生まれた!昭和30年代  第63号     


                    2006. 7. 14      


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  以前、深川にある江戸資料館に行ったことがあります。
  両国にある江戸東京博物館に比べたら、
  こじんまりしたものですが、
  江戸深川の下町を再現した様子は、
  なかなか芸が細かく、
  こちらのほうが江戸の雰囲気を知るには楽しめます。
  
  
  そこで、長屋の物干しを見た瞬間、
  思わず発した言葉が「なつかしー!」
  
  
  どうして江戸時代に来て、なつかしがるんだって。
  と思いつつも、そう言ってしまったんだから仕方ありません。
  
  
  それは、2本の棒を、地面に立てた物干し。
  棒には、さおをひっかけられるように、
  木切れがついています。
  
  
  我が家にも、こんな物干しが庭にありました。
  資料館にあったのは1段でしたが、
  我が家のは、3段でした。
  上のほうにさおをかけるときは、
  金具のついた棒に、さおを片方ずつ乗せて、
  上にかけました。
  
  
  母は、夏はローラー式洗濯機を使わないで、
  たらいと洗濯板で洗うことが多かったのですが、
  そういう時は、干した洗濯物からぽたぽたしずくがたれてきました。
  
  
  一番上は、お日様にも近く、しずくも落ちてこない。
  対して、一番下はお日様からも遠く、
  上の段のしずくを受けるというリスクをこえて、
  同じように乾くところまでいくのです。
  
  
  まるで社会を表しているような物干し。
  ここから、私は社会というものを学んだのです。
  
  
  なーんて、そんな子供だったら、
  今頃もっと大成してますって。
  
  
  普通の子供だった私は、もちろんそんなことは思いません。
  せいぜい、洗濯物が干されているところを絵に描くときは、
  たれるしずくも、きっちり描いていた程度です。
  今の子供に洗濯物が干されているところの絵を描かせたら、
  まちがいなくしずくはないでしょうが。
  
  
  それはともかく、
  思わぬところで、江戸時代人との共通項を
  発見してしまったのですが、
  考えたら、昭和中期までの生活には、
  江戸時代からの共通点が、
  けっこう残っていたということに気がついたのです。
  
  
  その一つが町の景観。
  もちろん、江戸時代とはまるで変わってます。
  でも、建っていた家は、外観まで木造という家は、
  多かったですよね。
  家の外壁や窓枠、腰掛けられる窓の手すり、
  今でいうベランダ的役割の物干し台とかまで、
  木でできていた家は、たくさんありました。
  

  家以外でも、我が家の庭にあったような物干しや、
  塀、垣根、どぶ板などにも、木はたくさん使われていました。
  江戸時代にはなかった電柱、駅のベンチ、改札なども木でした。
  そして、地面は土の道。
  
  
  今にくらべたら、多分に木と土のある町だったのです。
  さらに、草の茂る空き地などもありましたし。
  その点は、江戸時代により近いものだったでしょ。
  
  
  今、街を歩いているときに、見渡してみてください。
  ほとんどが、人工物で作られ、覆われているといっても、
  過言ではありません。
  
  
  ヨーロッパの街並みが美しいのは、
  中世の面影を残しているからだそうですが、
  この中世というのは、
  人間の文明と自然の比率が、
  一番対等で適切だった時代なのではないかと思います。
    
  
  日本でも江戸時代の暮らしは、
  自然と文明が、一番うまく折り合っていた時代。
  だからこそ、日本でもヨーロッパでも、
  そういう適切な比率の面影がある街並みは、
  美しく、また癒しを感じることができるのではないでしょうか。
  江戸時代の街並みが観光資源になるくらい、
  人の心をひきつけるのもそういうことではないのかなあと
  思うことがあります。

  
  人工素材だらけの現代の家より、
  日本の気候にあった江戸時代の古民家に住みたいって人は、
  今もたくさんいますよね。
  でも、自然比率の高い竪穴式住居に住みたいって人は、
  そうはいません。
  この自然と文明の折り合う比率って、
  けっこう大きなポイントではないかなあと思います。
  

  なんか、ビミョーに話がずれた気もしますが、
  もちろん、昭和30年代の暮らしは、
  今ほどではないにしても、すでにかなり文明先行になってます。
  それでも、昭和30年代の街並み再現でさえ、
  その時代を知らない若者までにも人気なのは、
  そこに、江戸の面影が隠されているゆえだと思います。
 
  
  とはいえ、実際に自然と文明が半々の割合で暮らすには、
  人間もその分だけ、譲歩を強いられます。
  現代人が、江戸時代の暮らしの不便さまで落とすことは、
  もうできないでしょう。
  でも、今の子供とくらべたら、
  私たちも、一応不便に耐えてることはありましたよ。
  
  
  あたりまえにあった、土の道です。
  これは、なかなかくせものでした。
  強風が吹けば、土ぼこりが舞います。
  前方に土ぼこりが渦巻いているのを見て、
  どうか自分が通るときには、風がやんでてくれ〜
  とか思ってると、
  自分のいるところに吹いてきて、
  砂がばちばち顔や手足にあたったり、
  目に入ったり。
  
  
  雨が降れば、あちこちに水溜りができたり、
  どろんこ道になります。
  それでも、雨の日は、長靴があるからまだいいのです。
  水溜りも泥んこも子供は大好きです。
  長靴なら、泥んこ道も怖くないし、
  ついた泥んこを洗い流すために、
  水溜りに入ることも必要だし?
  
  
  問題は、雨上がりの後の道。
  道がぬかるんでいるけれど、
  晴れているので、長靴ははかない状況のとき。
  
  
  ぬかるみ道を歩く靴は、
  どろんこだらけになり、
  時には、重たくなるほど靴底に泥がこびりついて、
  そこいらにある角や石に、
  泥をなすりつけて落としながら歩いたりしませんでしたか。
  
  
  小学校や幼稚園など、子供がいる施設の昇降口の階段などは、
  そういう日は、あちこち泥がなすりつけられて、
  玄関も泥だらけ。
  同じ道でも、水はけがよくて、
  ぐちゃぐちゃにならない場所は、
  天国のように思えました。
  確かにそういう状況では、
  舗装されている道は、歩きやすいなあと思ったものです。
  
  
  車でも、舗装されていない道となると大変です。
  車が通るような道は、すでに舗装されてましたけど、
  遠出して、雨上がりの横道などに入ったりすれば、
  ぬかるみ道でスリップしたり、
  車がどろんこだらけになってしまうことも。
  そんなところを走ってきたのか、
  乾いた泥で汚れた車も、
  今と比べれば、よく見かけたほうです。


  そんなぬかるみと乾燥が繰り返された道はでこぼこで、
  晴天続きでも、車で通れば上下左右にゆれまくり。


  そんな苦労もあった反面、
  雨上がりの道を歩いていて、
  ふと土の香りを感じたり、
  舗装された道から土の道に入って、
  歩く感触が優しくなったなと感じることもできました。
  
  
  また、冬の寒い朝などに、
  わざと霜柱のあるところを選んで、
  さくさく感触を楽しんで歩いたり。
  (もっとも、大人になった今は、
  できるにしても、我慢せねばならないかも。)
  
  
  どんな小さな路地までも舗装された結果、
  今度は、気温の上昇や水害などが問題視されてます。
  あちらたてればこちらたたずですが、
  土は、地球の表面なわけですから、
  覆いすぎては、異変が起きるのも当然です。
  
  
  人工素材が増えれば、木を使うのが減って、
  森林資源の保護にもなるけれど、
  自然に帰せない人工物は結局処分できないゴミとなって、
  地球を汚します。
  行き場を失って不法投棄される廃材なども、
  問題になってますよね
  これでは、地球にやさしいんだかやさしくないんだか
  わかりません。
  
  
  これからの文明は、
  人間が譲歩しなくても、
  地球環境や自然も守れる方向に発展していってほしいものです。
  そう、中世より高いレベルで、自然と文明半々の比率になれるように。
    
  
  昭和30年代は、明治以降、じわじわ台頭してきた文明比率が、
  加速して一気に進み始めた時でした。
  ちょうどその境目であったからこそ、
  私達は、消えていく中世の姿の、
  最後の片鱗を見た世代にもなったのです。
  
  
  なんて言うと、なんだか、みなさんを、
  すごいお年寄り気分に陥れてしまったでしょーか?

  
  


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    あれこれ後記
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  ◇私たちが子供のころ、
   乗り物ですわっている見知らぬ人が、
   子供をひざに抱っこしてあげる光景が、
   よくあったということを、
   前に取り上げたことがありますよね。


   子供だった私たちも、
   どこか落ち着かなかったものの
   抱っこされた経験があると。  
  

   混んでいるときは、
   子供は立っているのが当然の時代の
   大人の思いやりの表し方でした。
  
    
   そんな光景は見なくなったと思ってたのですが、
   実は1年ほどまえに、出会ったのです。
   お話したいと思いつつ、
   今回は長くなるので次号にまわそうとか、
   次号になると忘れてたりで、(忘れっぱなしともいうけれど)
   ついに1年持ち越してしまいました。
  
  
   今回こそは、ようやくにして、そのお話を。
  
  
   私は、バスに乗るのは、年に数回程度ですが、
   出あったのはそのときです。
   普段は乗らない路線の都バスでしたが、
   けっこう混んでいました。


   幸いにも、私は座れたのですが、
   数箇所過ぎたところで、
   かなりお年を召したおばあさんが乗ってきたので、
   席を譲って、そのそばに立ってました。
  
  
   次のバス停で、
   お母さんと一緒に、
   3歳くらいの女の子が乗ってきました。
   すると、そのおばあさんが、ニコニコして、
   「おじょうちゃん、ここにおいで。」
   と、自分のひざを指差したのです。
  
  
   「おー、さすが昔の人だー!
   久しぶりに見たぞー、この光景!」
   このおばあさんに席を譲ってよかったなー。
   いいもの見せてもらえたわ。
   と一人で喜んでました。
  
  
   お母さんは20代くらいの人でしたが、
   それに対して、笑顔で子供を見たのも
   昔と同じ光景。
  
  
   違ってたのは子供の反応。
  
  
   親の後を追って歩いてきた歩みをハタと止めると、
   ぎょっとしたように固まって、
   そのまま思わず2,3歩あとずさりしちまいました。
  
  
   初めてのことだったからか、
   知らない人に声かけられてびっくりしたのか、
   さらわれるとでも思ったのか?
   とはいえ、
   そこまで驚かなくてもいいと思うんだけど…
   というほどのリアクションを見せてくれました。
  
  
   やっぱり、ご時世かしらねえ。
  
  
   私達の頃は、
   もじもじする子供はいても、
   こんなに驚く子供はいなかったぞ。
  

   今の子供は、そういう社会に生きているんだなー。

                             


  ◇ワールドカップで、ついに日本は、
   奇跡を起こすことはできなかったけれど、
   残ったチームの顔ぶれ見たら、
   すっぱりあきらめがつく気がしました。
   やはり、ベスト8に残っていくようなチームは、
   レベルが違いますね。


   そういう中で、あそこまでひっぱっててくれたジーコさんに、
   むしろお礼を言わなくては。
   帰国早々、さっそく、
   次の監督候補の名前を出してしまったおっさんもいましたけど、
   日本は、もっと感謝すべきでしょう。


   日本が抜けたとたんに、
   興味もなくなってしまったワールドカップだけれど、
   ジダンの頭突き騒動で、
   まだ盛り上がってますね。


   真相はまだはっきりしてないけれど、
   今の情報だけから考えたら、
   個人的には、ジダンの肩を持ちたいほう。
   だって、もし本当に、
   愛する家族を侮辱される言葉を言われたのなら、
   自分を侮辱されるより、傷つき腹のたつことですから。
   ジダンの言った、ユニホームうんぬんの発言を、
   マテラッティーが勝手に高慢だととらえたこともありうるし。
       

   そう言えば
   日本にも子供のけんかで
   「おまえのかあさん、でべそ〜」
   って言うのがありました。
   あれも、本人ではなく、母親を侮辱して相手を傷つける、
   かなり陰湿で卑怯な言葉ですね。
   まあ、でべそというところが子供らしいとも言えますが、
   そんなやりくちを、最初に考えついた子供って、どんな子かいな。
   
   
   
                                   (ひとみ)   




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