「いいとき生まれた!昭和30年代」

メールマガジンバックナンバー

   


第61号 ゴムひもと押し売り


  ★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆


        いいとき生まれた!昭和30年代  第61号     


                    2006. 6. 1      


  ★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆



  子供の命が奪われたり、
  危険な目にあったりする事件が報道されない日がないのでは、
  と思える昨今ですね。
  
  
  こういうゆがんだ社会にしてしまった大人のいたらなさが
  子供にしわよせされているような気がしてなりません。
  日本人全体の幼稚化、モラルの低下、
  ついには、国民の義務の投票率すら落ちてしまった状況では、
  まともな国になるわけはありません。
  
  
  「私らの子供時代にくらべると、
  今の子供はかわいそう。」
  今、大人である私たちは、よくこう言います。
  でも、私たちが子供のころは、
  「私らの子供時代にくらべると、
  今の子供はいいね。」
  こう言われることの方が、多かったと思いませんか。
  今の子供に、こう言ってあげることができないのは、
  大人として、恥ずべきことではないでしょうか。
  
  
  と、今回は社会派メルマガ風に始めてみました。
    
  
  思えば、私たちが子供の頃は、
  世界に誇れる安全な国でした。
  最初のころに、紹介したエピソードですけど、
  当時は、買い物途中に迷子になって消えた私と幼馴染のために、
  即パトカーが探しに出動してくれたほど、
  警察も手が回せてた時代です。
  
  
  それでも、子供心には、
  「そうかあ?こんなに毎日事件が起きるのに?」
  と思ってました。
  今思えば、犯罪の頻度も質も、まるで違うもので、
  その意味がよくわかります。
  
  
  そんな時代に育った私達でも、
  「知らない人についていってはだめ。」
  ということは、言われてきましたね。
  昭和30年代には、すでに吉展ちゃん誘拐事件という、
  私達と同年代の子供が犠牲になった不幸な事件が起きてます。
  それでも、今ほど子供達が簡単に殺されていくような、
  異常な時代ではありませんでした。
  だからこそ、この事件は許しがたき大事件として、
  人々の脳裏に刻み付けられたのです。
  
  
  もっとも、人さらいに気をつけろということは、
  はるか昔から言われ続けてきたことです。
  安寿と厨子王の話だってあるくらいですし、
  戦国時代のような乱世には、
  数限りなくあったことでしょう。
  
  
  それでも、どちらかというと戦前くらいまでの子供たちには、
  警告というより、
  言うことをきかない子供に対する脅し的な要素で
  使われることのほうが多かったと思います。
  
  
  「そんなに言うことを聞かないと、人さらいが来るよ。」
  (来るのがわかってたら、捕まえたらいいのでは?)
  「人さらいに連れていかれたら、サーカスに売られちゃうよ!」
  (なら、サーカスを捜索すれば、すぐ見つかると思います。)
  そうつっこみたくなるような子供だましですが、
  それが通ってしまってたというのも、
  また、それで効果があったというのもすごいです。
  
  
  今、「そんなに悪い子だと、人さらいが来るからね。」
  なんて物騒なこと、冗談にも言えません。
  命さえ危うい時代に、
  「サーカスに売られる」程度では、脅しにもなりません。
  
  
  まさに、安全な国ゆえの感覚だったのでしょう。
  もちろん今でも外国に比べたら、まだ安全な国ですが、
  昔の日本とはくらべものになりません。
  でも、どこかのん気だったのは、
  身を守るほうの意識だけではなく、
  犯罪者にも言えます。
  特に、人から金品をとろうとする犯罪は顕著です。
  
  
  たとえば、押し売り。
  今の押し売りは、
  無理やり契約させ、
  勝手に工事したり、
  次々と高額商品を売りつけて
  何十万、何百万と騙し取るという、
  えげつないやりくちです。
  
  
  対して、昔の押し売りと言えば、
  ムショ帰りだと脅して、
  ゴムひもを高く売りつけるというもの。
  
  
  ゴムひもです。
  いえ、ゴムひもだからいいということでは、
  決してありません。
  罪は罪です。
  でも、今のあこぎさから比べたら、
  いくら高く売りつけるといっても、
  ずっと可愛いものだったではありませんか。
  押し売りとゴムひもが、切っても切れない関係だったなんて、
  今から思うと、平和な感じに見えてしまいませんか?

  
  そんな時代でしたから、
  ある日、行商に来た小間物屋が広げた品物の中に、
  ゴムひもを見つけてしまったときは、大変でした。
  なにせ、私の頭には、
  押し売り=ゴムひもという構図が出来上がってましたから、
  「この人、押し売りだ〜。」
  そう信じ込んでしまいました。
  
  
  「でも、そんな怖そうな人じゃないよなあ。」
  と思いつつ、おっかなびっくり眺めていると、
  ふだんは、財布の紐の固い母が、
  今日に限って、糸などを、たくさん買い込んでいるのです。
  「あのおじさん、あんなににこにこして優しそうだけど、
  やっぱり、押し売りだから、
  たくさん買わないと脅してくるんだな。
  だから、お母さんは、高いゴムひもを売りつけられる前に、
  糸をたくさん買って、ごまかしているんだ。
  しかし、お母さんって、よくあんな普通の態度でいられるなあ。」
  (一方で、おっかさんなら平気か、という気もありましたが。)
  
  
  で、小間物屋が帰ると急いで聞きました。
  「今の人、押し売り?」
  笑われましたなあ。
  母は、本当に必要なもので安かったから、
  買い込んでいただけだったのです。
  
  
  まっとうに行商をしている小間物屋さんは、
  ゴムひもを持っていたばかりに、
  まさか自分が押し売りと思われてるなんて、
  夢にも思わなかったでしょうね。
  まあ、行商で小間物屋が来たということ自体にも、
  かなり時代を感じますが。
  
  
  しかし、ゴムひもから、押し売りを想像する技は、
  今の子供からは、どうひっくりかえしても、
  出てこないと思うぞ。
  
  
  私たちに身近だったのは、
  校門の前とか公園で、
  すぐ壊れてしまったりするような怪しげなものを売っている商売。
  文字通り、子供だましの商売って感じなのが、ありましたね。
  これも、子供の小遣いを狙うなんて、
  情けないことですけど、
  年金暮らしのお年寄りの生活費を狙うようなあこぎさから比べたら、
  まだ子供の社会勉強程度の被害で済んでいました。
  

  しかし、今考えると、学校の前で不法に路上販売をして、
  いいかげんなものを堂々と売ってたというのも、
  すごい話です。
  それに、学校帰りの子供はお金を持ってないですから、
  すぐ売って、とんずらするわけでもない。
  「もうすぐ、いなくなっちゃうよ。」
  とあせらせて、家にお小遣いを取りに走らせるくらいのことは、
  してたでしょうけど。 
  

  学校側も悠長なもので、  
  私が小学生になったときは、
  昭和40年代になってましたが、
  その当時でも、
  ただ「買わないように」
  という注意があった程度でした。
  いんちき商品だと決めつけることができない段階では、
  買わせないことで防ぐということだったのでしょうか。
  それだけでは、
  もちろん興味を示す子供がなくなるわけではないですが、
  買ってしまったなら、
  それは自業自得の結果になるわけです。
  追い払って、目の届かないところで商売されるより、
  そのほうがいいということでもあったのかな。
  
  
  昔のサザエさんを読んだとき思ったのですが、
  泥棒とか押し売りがけっこう登場してくるんです。
  こういう漫画やコントに登場する泥棒といえば、
  手ぬぐいをほおっかむりして鼻の下で結び、
  唐草模様の風呂敷を背負っているという、
  江戸時代から続く伝統的?なスタイルがあります。
  時代が変わって服装が変わっても、
  このアイテムだけは、はずせません。
  泥棒ひげという、泥棒が生やす髭の呼び方まであります。
  一目で、泥棒とわかるようになってます。  

  
  だからこそ、実際にはこんな格好をしている泥棒はいません。
  もしいたら、
  「あんたは、悪いことするのには向いてないと思うぞ。」
  と言ってあげてくださいまし。
  
  
  こういう定番のキャラクターが作られて、
  どこか憎めない人として、しばしば登場するということは、
  そういう輩といえども、社会の一員として認めていた、
  ということではないかと思うのです。
  世界を見ても、
  盗賊の類は山賊、海賊なども含めて、
  童話にも、よく登場してきますね。
  
  
  昔の人は、お店などの帳場に、
  泥棒用のお金を少し残しておく習慣があったそうです。
  今でも、少し現金を置いておいたほうがいいということは言われます。
  何もないと腹いせに火をつけられたり、
  家の中をめちゃめちゃにされたりするからだそうです。
  でも、昔はそればかりでもなかったようで、
  泥棒にあげるお金という考え方もしていたようです。


  それは、昔は、生活に困って犯罪や犯罪もどきをする人がほとんどだった、
  ということがあるからでしょう。
  だから、悪い人でも人の心はなくしていない、
  ということを信じられる部分が、
  今よりずっと持てたのだと思います。
  悪人キャラを、憎めない人として、
  お話に登場させることもできたのも、
  そういう根底があったからこそのことではないでしょうか。 


  対して今は、
  遊ぶ金欲しさのために、
  簡単に犯罪者になってしまいます。
  だいたい、遊ぶお金のために借金するというスタンスのCMが、
  あたりまえに流れている世の中になってしまったのですから、
  感覚が狂うのも当然。
  犯罪も借金も人間としてのプライドも、
  ずいぶん壁が低いものになってしまいました。
  
  
  人の良心につけこむような犯罪、
  人間とは思えない犯罪ばかりが目につくようになり、
  さらには、犯罪をしても反省するどころか、
  再犯者も増える一方です。
  そういう状況では、親しみのある悪人キャラなんて絶対生まれないし、
  またそんなことしたくもないし、しても不謹慎に見えてしまうでしょう。
  それはそこに、人としての心が
  かけらほども感じられないからです。
  

  犯罪をなくすには、
  警察を強化させることも必要でしょうが、
  人の心がおかしくなっている社会そのものを変えないと
  始まらないのではないか、と思うのです。
  

  そう考えると、
  親しみのある悪人キャラが生まれていた文化って、
  ほめられることと言っていいのかわかりませんが、
  ある意味では、深いものがあると思えませんか。

  
  安全な日本でも、そんな時代は、
  私たちの子供時代と共に終わってしまったということです。

  
  
  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    あれこれ後記
  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
  

  ◇この間、友人から聞いたのですが、
   昔の四角いトイレ用の紙(このメルマガでも以前、とりあげましたね。)
   が売っていたそうで、
   思わず、買って帰ったそうです。
   「自転車にとりつけるとき、ちょっと恥ずかしかったけど」
   と言ってましたが。
   水洗トイレに流しても大丈夫だそうです。

   
   1年ほど前の話だそうですが、私の家からも、
   自転車なら10分もかかるかかからないかで行ける距離のお店なので、
   今度、時間ができたら、行ってみよっと!


   そんな話を聞いて、帰ってくる途中、
   用事があって隣町に寄ったら、
   ラッパを吹いて、豆腐を売っている人を見ました。
   しかも、歩きです。
   昔でも自転車だったのに。
   ひいているのは、ショッピングカートみたいなのに、
   水色の小箱がいくつか積んであるという今風でしたが、
   ラッパの音色は昔のまま。
   残念ながら、私が聞いて育ったのとは、旋律は違ってました。
   私の聞いたのは、始めの音から上がってまた下がるという
   3音だったのですが、
   その人のは、上がったところまでの2音で終わるのです。
   つい自分の聞きなれた音が頭に響いていたので、
   最後の1音がはずされて、
   自転車からこけそうになりました。


   だけど、思いがけず、昭和30年代に二度も触れた一日でした。





  ◇2年ほど前でしたでしょうか、
   通りかかった小学校で運動会をしているのを見て、
   びっくりしたことがありました。
   校門は、きっちり閉められていて、
   関係者以外の人は、中に入れない状態。
  
  
   道を通りかかった人や、関係者以外の人たちは、
   道端に立って、鉄格子の柵の外からながめていました。
   異様な風景に思えましたが、
   それは外に立ってながめている人の姿に感じたのではなく、
   中にいる人たちが、閉じ込められている中で、
   運動会をしているように見えたからです。
   思わず、「刑務所の運動会か!」
   と言いたくなりました。
   でも、おかしな馬鹿がいるから、
   こんなことにならざるをえないんでしょう。
   子供達が気の毒でした。
  
  
   そして、今年も、運動会をしている小学校に行き会いました。
   しかし、こちらの学校の校門は、
   大きく開かれていて、
   自由に出入りできるようになっているのを見て、
   なんだか、とっても嬉しかったです。
  
  
   私達のころは、校庭の門なんて、
   いつだって一日中開け放たれているのが、
   あたりまえでしたね。
   まさか、こんなにも些細な何気なかったことが、
   すごい恵まれていたことになるなんて、
   子供の頃は想像もつきませんでした。
   今の生活にも、きっとそういうものがたくさんあるはずですね。
   しっかり見つけて、大切に守っていきましょう。


   しかしですな、通りすがりにちらっと見ただけの運動会なのに、
   子供たちが一生懸命演技している姿を見ただけで、
   そのけなげさに涙ぐんでしまった私って、
   確実に年取ってるぞ。
  

                               (ひとみ)




  
  ======================================================================
   
   発 行 日本の小粋な和みの暮らし「和・は・は」
       http://wa.hitokiwa.com/

    このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/を利用して
    発行させていただいております。

   「いいとき生まれた!昭和30年代」(月1〜2回発行)
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000135400
    購読・解除    http://wa.hitokiwa.com/merumaga.htm



    姉妹サイト やる気元気前向き!「あっぱれぷらすサイト」
        http://www2.ocn.ne.jp/~aps/
        よりこんなメルマガも発行しています。

   「あっぱれ長屋のプラス話」(月1〜2回発行)
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000115032
    購読・解除    http://www2.ocn.ne.jp/~aps/nohohon.htm


   「脱!惰性生活〜惰性で生きるな、自分を生きよう」(月1〜2回発行)
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000117051
    購読・解除    http://www2.ocn.ne.jp/~aps/nohohon.htm
  

   
    ※メールはこのメールの返信ボタンをクリックすれば、
     返信用のメールが開きます。
     (件名はそのままでけっこうです。)


  ====================================================================== 
  
           
←前の号      次の号→

一覧から選ぶ


登録する



このページのTOPへ戻る









あっぱれぷらすサイト ぷらっとネットショップ


和ははホーム


今の日本を楽しむ和はは生活

懐かしの昭和30年代

幕末維新の時代

日本の物産名産入口

日本の旅

日本のエコロジー

こだわり国産品



日本の伝統文化を取り入れた和はは生活

日本の衣

日本の食

日本の住

日本の癒し

日本の美

日本の縁起物

日本を知る本

寄り道・和はは生活

松竹梅子の小遣い稼ぎの口入屋

メールマガジンのご案内

和ははの日本人講座

お休み処