「いいとき生まれた!昭和30年代」

メールマガジンバックナンバー

 


第36号 紙あれこれ


  ★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆


         いいとき生まれた!昭和30年代  第36号     


                 2005. 5. 10           


  ★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆━★☆



  前号は、お茶屋さんへのおつかいの話でしたが、
  私にはもう一つ、忘れられないおつかいがあります。
  
  といっても、こちらのほうは、
  頼まれていくおつかいというより、
  自分で必要になって、行かねばならなかったおつかいでした。
  
  小学校の1,2年のことでしたので、
  正確には、昭和40年代頭のことです。  
  学校で千代紙を使った工作をすることになり、
  それを用意していくことになりました。
  
  ところが、私はそれまで、千代紙なるものが、
  どんなものなのか、まったく知らなかったのです。
  でも、母に言えば買ってきてくれるだろう、
  と軽く考えて帰宅し、さっそく母に、
  「学校でちよがみっていうのを使うから、
  用意してきなさいだって」
  と言いました。
  
  すると母は、言いました。
  「じゃあ、駅の近くの文房具屋さんで売っているから、
   買ってきなさい。」
  
  えっ?
  よりによって、わけわかんないもののときに、
  そういうこと言うか?
  
  「買ってこいったって、どんなのかわからないよー。
  ついてきてよー。」
  
  ごねてごねて、粘ったのですが、
  母も頑として、ついていこうとはしませんでした。
  
  「お店の人に聞けば、わかるから。」
  と言われてしまえば、ごもっともなことで、
  それまでです。
  
  仕方なく、私はどんなものかを知らない不安を抱えたまま、
  文房具屋さんまで、やってきました。
  お店に入ろうとして、
  ふと入口の横に置いてあった棚に目をやると、
  なんと、あるではないですか。
  お目当ての文字が袋に書いてある紙が。
  
  「なーんだ、これのことか。」
  
  わかって良かった、良かったと思いながら、
  それを買って帰りました。
  
  「ただいま〜。」
  
  「あった?」
  
  「うん、あったよ!ほら!」
  
  「……………。」
  
  一瞬、絶句した母の口から、次に出た一言。
  
  「ばっかだねーおまえは!」

  「?」

  母よ、そう言われても、わけわからんぞ。
  きちんと説明せい。
  なんて言ったら、ぶっとばされただろうけど、
  とにかく、わけがわかりません。   
 
  実は、私の買ってきた袋には、
  「ちよがみ」ならぬ、
  「ちりがみ」という文字が書かれていたのでありました。
   
  昔、50枚だったか100枚くらいだったかの束を、
  そのまま二つ折りにした形で、
  袋に入れたちり紙が売られていましたね。
  
  ポケットティッシュがない時代は、
  これを、その都度何枚か出してはたたんで、
  持ち歩くのが普通でした。

  で、ともかくも、
  歩いているうちにか、それを見た瞬間にか、
  聞きなれない「ちよがみ」が、
  聞きなれた「ちりがみ」に、シフトしてしまったようです。

  たまたま、私が見つけたちり紙は、高級なものでしたので、
  ちょっと気取った感じで、
  それがいつも使うものと同じとは思わなかったのでしょう。
  (たぶん)
  
  あまりの我が子のばかさ加減に、
  母は怒る気も失せたのか、私を連れて、
  今度は素直に、文房具屋に交換に出向いたのでした。
  だから、最初からついてきてくれりゃ、早いのに〜。
  (そういう問題じゃないんだけど)

  文房具屋さんが、「ここからお選びください」と、
  お店の一角の引き出しを開けてくれて、
  初めて「ちよがみ」なるものを見た私は、
  自分の勘違いの大きさを、ようやく知ったのでした。
  
  でも、もしかしたら、
  いや多分、
  いや絶対、
  「ちよがみと間違えて、ちりがみを買ってった子供がいたんだよ。」
  とあの文房具屋で、笑い話にされただろうな。
  
  今、私がそのくらいの子供だったら、
  絶対、間違えない自信があります。
  だって、「ちりがみ」なんて書かれた商品、
  どこにも売ってませんもの。
  
  ちなみに持ち歩くちり紙が、
  白くて柔らかめで感触も良かったのにくらべて、
  トイレで使われたのは、古紙を再生したもの、
  しかも、漂白はしてないので、
  グレーで手触りもちょっとごわごわしたかんじの、
  四角いちり紙でしたね。
  時には、もとの新聞の文字がちょっと残ってたりして、
  でも、そういうのを見つけると、なぜか嬉しくなったりしました。
  こちらは、便所紙とかおとし紙とも、言われてましたっけ。
  
  それでも、さらに昔は、新聞紙そのものなどを使っていたそうですから、
  このちり紙も、大きな進歩だったわけですね。
  
  昔のトイレの隅には、専用のかごとかが置いてあって、
  そこにこのちり紙が積まれてました。
  何かの蓋をひっくりかえして、
  置き台代わりにしているところもあったな。
  
  このトイレ用の紙は、結構まとまった高さのワンセットで、
  売られていたような記憶があります。
  買って持って帰る時には、
  ちょっとかさばったのではないでしょうか。
  もっとも、今のトイレットペーパーだって、
  けっこうかさばるし、ずっと持ってると重いですけど。
  
  「おとし紙」や、「便所紙」は、もうすっかり死語ですけれど、
  「ちり紙」や「はな紙」なんていうのも、似たようなものでしょうね。
  自分だって、使わない言葉になってしまいましたもの。
  
  




  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    編集後記
  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  


  今日は、話がそれますが、
  JR西日本の事故について、ちょっと触れたい気分です。
  
  早くも2週間がたちましたが、
  なんだか事故の後にも、嫌な話がたくさん出てきますね。
  
  危機管理の認識や緊張感が希薄なのは、
  社会全体の現象ですが、
  それにしても、命を運ぶ会社の社員までが、
  驚くべき認識で…。
  
  自分のところが関係なくても、
  世間の目から見たら会社は一つ、ということは、
  ふつうなら上司が部下に教えることではないのでしょうか。
  
  でもその後に、今度は、
  JR西日本の社員に対するいやがらせや、
  置石などのいたずらが多発しているというのは、
  さらに嫌な話です。
  本当に、この国は、人間のモラルが、
  どんどんゆがんで低下していきますね。
  
  これまでもそうでしたが、
  こういった企業体質や社会のゆがみって、
  事故や事件になって犠牲者を出して、
  初めて問題になりますけれど、
  それではいけないはず。
  
  今回の事故でも、犠牲者の方はもちろん、
  ご家族の方の悲しみは、胸につきささるようです。
  また、運転手のご家族も気の毒だなあと思います。
  家族を亡くした悲しみは一緒でも、
  おおっぴらにそれを出すわけにはいかない、
  というのもつらいと思いますよ。

  犠牲者が出てから、問題に目を向けていたら、
  こういう不幸は、後を絶ちません。
  人間のモラルが低下している時代を、
  もっと真剣に見つめなおすところから始めていくこと、
  それしか最大の防止策はないのかもしれません。
  
 

  この事故以来、電車に乗る時は、
  入ってくる電車の運転手さんを、
  きっちり見るようになりました。
  考えたら、命を任せる人なんですもの。
  
  見てみると、もちろん基本は、
  「仕事中です!真剣に運転してます!」
  という感じの運転手さんたちですが、
  人によって、背筋もピッと伸びて気合を感じる人とか、
  職人肌だよって感じの人とかいろいろいて、
  一瞬のことですけど、人間観察できます。

  でも、アルミの車両だと、
  ちょっと不安が頭をかすめるようになりました。
  そういえば、何年か前の日比谷線の事故の後も、
  座っていて電車がすれ違う時に、
  思わずひやりとしたものです。
  
  当事者でなくても、事故後しばらくは、
  こう感じてしまうことがあるということは、
  実際に乗っていた人の心の傷は、
  はかり知れないほど深いものだと思います。

  私は、小学校3年の頃までは、
  ドッチボールとか大好きでしたが、
  ある日、体育の授業で、
  なんかの球技をやっているときに、
  顔面にボールが直撃したことがあります。
  それで、怪我をしたわけでもなく、
  痛さに泣いただけでしたけど、
  それ以来、球技がすっかり怖くなって、
  今でもボールはもとより、
  何かを投げて渡されるのも苦手です。
  
  それでも、物のほうは、年季がはいってきたもんで、
  だいぶ平気になってきましたが、
  ボールはだめです。
  どんな球技だったかも忘れているし、
  投げた相手が必死に謝ってくれたのは覚えていても、
  それが誰だったかも忘れています。
  でも、恐怖感だけはしぶとく残っているのです。
  (まあ、ぶつかったお陰で、
  顔のつくりが多少、修正されたと思うことにしてますが。)

  しかし、このことを思うと、
  命の恐怖にさらされた思いは、
  どれほどのトラウマになってしまうのか、
  想像つきません。
    
  亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、
  助かった方、残された方が、
  一日でも早く、心の痛みから立ち直れることを、
  祈ってやみません。
  
 
 

                       (ひとみ)
  
 

 

  ======================================================================
   
   発 行 日本の小粋な和みの暮らし「和・は・は」
       http://wa.hitokiwa.com/

    このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/を利用して
    発行させていただいております。

   「いいとき生まれた!昭和30年代」
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000135400
    購読・解除    http://wa.hitokiwa.com/merumaga.htm



    姉妹サイト やる気元気前向き!「あっぱれぷらすサイト」
        http://www2.ocn.ne.jp/~aps/
        よりこんなメルマガも発行しています。

   「あっぱれ長屋のプラス話」
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000115032
    購読・解除    http://www2.ocn.ne.jp/~aps/nohohon.htm


   「脱!惰性生活〜惰性で生きるな、自分を生きよう」
    バッグナンバー http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000117051
    購読・解除    http://www2.ocn.ne.jp/~aps/nohohon.htm
  

   
    ※メールはこのメールの返信ボタンをクリックすれば、
     返信用のメールが開きます。
     (件名はそのままでけっこうです。)


  ======================================================================


←前の号      次の号→

一覧から選ぶ


登録する



このページのTOPへ戻る









あっぱれぷらすサイト ぷらっとネットショップ


和ははホーム


今の日本を楽しむ和はは生活

懐かしの昭和30年代

幕末維新の時代

日本の物産名産入口

日本の旅

日本のエコロジー

こだわり国産品



日本の伝統文化を取り入れた和はは生活

日本の衣

日本の食

日本の住

日本の癒し

日本の美

日本の縁起物

日本を知る本

寄り道・和はは生活

松竹梅子の小遣い稼ぎの口入屋

メールマガジンのご案内

和ははの日本人講座

お休み処