「いいとき生まれた!昭和30年代」

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         第121号 ガリ版印刷


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      いいとき生まれた!昭和30年代  第121号     


                     2014. 9.28  


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  近ごろ、妙に思い出すのが
  ガリ版刷りのプリント。
  昭和の社会までは
  馴染み深いものでしたね。


  職場でも使われてましたが、
  私たちの世代は、
  主に学校関係のものでお世話になりました。
  学校からのお知らせも、
  給食の献立表も、
  遠足のしおりも、
  先生お手製のテストも、
  みんなこれ。


  テストは、
  白紙に活字印刷された業者が作るものも
  ありましたけど、
  受ける方にとっては
  どちらもテストに変わりないです。
  ガリ版刷りのテストだからって、
  手抜きでいいやなんて思う子供は、
  昭和のよい子にはいませんでしたよねー。


  商売をしていた父も、
  何に使ったのかは知りませんが使ってたようで、
  ガリ版刷りの道具一式持ってました。
  処分した記憶がないので、
  今でも探せばあると思います。


  そのくらい浸透してたガリ版刷り。
  あの素朴な味わいが、
  近頃懐かしくてならないのです。


  出来上がりも素朴ですが、
  作り方も素朴。
  もちろんすべて人力勝負ですから、
  電気なんざあ
  全く使う必要ありやせん。


  活字を一文字ずつ組んでいく活版印刷も
  気の長い作業だと思いますが、
  ガリ版刷りもなかなか根気のいる作業です。

 
  専用の板の上にマス目の入ったロウ原紙をのせ、
  鉄筆でカリカリと削りながら書いていく。
  この音が、
  ガリ版刷りと言われる所以ですね。
  あれは書いてる感が刺激される、
  けっこう心地よい音です。
  その音が印象的だったからこそ、
  正式名の謄写版印刷より、
  ガリ版刷りという言い方が浸透したのでしょう。


  それにしても、いきなりロウ原紙に書けるものばかりではありませんから、
  その前に原稿を書くケースも相当あったはず。
  それからようやくロウ原紙に清書となると、
  気が遠くなりますねえ。


  江戸時代までの、木に彫って印刷した木版印刷を思えば
  充分進歩した、手軽にできる印刷手法で、
  当時は面倒にも感じなかったんでしょうけど、
  今考えると、ため息が出そう。


  しかし、それまで当たり前にできていたことが
  もっと手軽にできるようになると、
  今度は大変に感じるようになってしまう。
  人間って、本当にやっかいな因果を背負ってます。
  少なくとも、進化すれば、退化してしまうものも必ずあるってことは、
  忘れてはいけない気がします。


  とはいえ、もしロウ原紙が修正不可能だったら、
  当時でもやってられない作業となるところ。
  専用の修正液があったことは救いです。
  ひっかいた溝を埋めて書き直せるもので、
  色もヨードチンキみたいな色をしていて、
  まさに傷を手当するみたいでした。
  作業の効率化もさることながら、
  ロウ原紙を無駄にしないためにも
  必要不可欠。


  ある時、先生が教室でガリ版刷りをしていたことがありました。
  この、場所を選ばずどこでもできるというところも、
  ガリ版刷りのいいところです。
  その時に先生が印刷機にセットしてたロウ原紙が、
  大幅な修正を入れたらしくて、修正液だらけでした。
  よい子なら
  「先生がそれだけ苦心して作ってくれてる」
  と感じるところ。


  しかし私は
  「先生でもたくさん間違えるんだー」
  と親近感を抱いておりました。
  我ながら、困ったガキです。


  この印刷機も、
  「機」というほど大げさなものでなく、
  正確には印刷器と言えるようなものですね。
  木製の型箱にスクリーンみたいな網がついていて、
  下にロウ原紙と印刷する紙をセットした後、
  このスクリーンの上からインクを付けたローラーをころがしては、
  1枚1枚刷り上げていく。
  刷ってる人には黒いアームカバーが似合うこの作業を思うと、
  あまりの素朴さゆえに感動の涙があふれそうです。


  ちなみに、たまに黒インクのプリントもありましたけど、
  なぜか青インクが多かったです。
  だから私のガリ版刷のイメージは青インクです。
  みなさんはいかがですか。
  いずれにしても、手も汚れるし、
  服につけないよう気をつけないといけないのは確かです。


  しかし、クラスの分だけならともかく、
  全学年とか全校に配る枚数刷り上げるって、
  どれだけ大変だったんだろう…
  と今頃、気がついてどうするよ。


  今の学校の先生は、
  ただでさえ忙し過ぎて大変なようですから、
  もし今もガリ版刷りの世だったら、
  教師の過労死が続出していたかもしれません。


  いや、ちょっと待て。
  よく考えると、
  先生が過労死の心配もなく、
  生徒のためにガリ版刷りをする時間を捻出できてた時代のほうが
  よっぽどまともということになるのではないかい?


  ガリ版刷りをする機会は、
  高学年くらいになれば、
  生徒がする機会もありました。
  学級新聞とか、文集とか。


  私もロウ原紙に書いた覚えがありますが、
  原紙上では、きれいに書けてると思ってたのに、
  印刷してみたら、
  あまりの字の汚さにびっくりした記憶だけが残ってます。
  何のために、何を書いたのかはすっかり忘れてますけど、
  いつもと同じ字で書ける先生はすごいなあと
  尊敬しました。(あ、困ったガキ返上していいかな)


  このガリ版刷りの素朴な手書きの味わいを
  さらに引き立てたのが印刷する紙。
  そうです。
  ガリ版刷りの紙といえばわら半紙が定番。


  質のいい紙ではないけれど、
  ガリ版刷りのインクとの相性も、
  コスパも良くて、
  広く重宝され使われていました。


  現在もあるにはあるようですが、
  現在のわら半紙は藁を原料とはしてないそうですので、
  わら半紙といっても名前だけ。
  しかも、今のものは製法の関係で変色しやすく、
  一方で価格は高くなったということですから、
  ますます別物。


  ガリ版刷りとわら半紙。
  相性がばっちりで、
  社会に広く溶け込んでいたあのコンビも
  昭和と共に消えて行ったものの一つなんですね。


  でも、当たり前に受け取っていたあのプリントの中には、
  先生自筆の手間と心が
  そのまま一緒に刷り込まれて届けられていたことや、
  そういうものに触れて育ったことの意味は
  私たちが思う以上に影響を与え、
  大きな作用をしていたかもしれないなあと思えるのです。


  それは決してノスタルジーからくる思いではなく、
  手書き文書が消えた時代になったからこそ見えてきたもの、
  という気がしてなりません。



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    あれこれ後記
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  ◇社会人になった時はすでにオフィスではコピー機が一般的でしたが、
   当時はコピーを取ることを、
   「コピーする」ではなく
   「ゼロックスする」と言っていましたね。
   それだけコピー機=ゼロックスの時代。

   
   さらに、重要度の低いものをコピーする時は、
   ゼロックスではもったいないということで、
、  経費の安い青焼コピーを使うことになってました。


   これも今ではすっかり昭和の思い出になりました。




  ◇メルマガは6ケ月発行がないと廃刊にされてしまいます。
   読者の方に失礼をしないためにも、
   そこだけはどんなに忙しくても死守したいと思ってましたが、
   この間、一番長く発行してきた別のメルマガが
   うっかり期限切れで廃刊にされてしまいました。


   廃刊にされても、いつでも復刊はできるし、
   7割方原稿はできてるのですが、
   廃刊、復刊を繰り返しては混乱させてしまいそうで、
   このまま廃刊させるか復刊か悩んでます。
   (って、繰り返すこと前提に考えてる自分ってどうよ。)
   

   でもご挨拶もなしに廃刊という、
   一番したくなかった事態を招いてしまったので、
   こちらのメルマガでも、そういうことになっては大変。   


   間に合ってよかった〜!
   みなさんこんにちは〜。
   いつもこんな馬鹿に気長にお付き合いくださって、
   本当にありがとうございます〜!

                        (ひとみ)


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