「いいとき生まれた!昭和30年代」

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 第110号 子供用自転車で得たもの失ったもの



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        いいとき生まれた!昭和30年代  第110号     


                    2009. 10. 4   


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  昔は車の掃除と同じくらい、
  よく見かけたのが
  自転車のお掃除光景。
  
  
  ぼろきれで、せっせと自転車を磨いて、
  油をさして、タイヤに空気を入れる。
  自分で修理までしてしまう人だっていましたね。


  今は、自転車が趣味などで、
  かなり入れ込んだ自転車を持っているという人ならいざ知らず、
  ママチャリを本格お手入れしてます、
  なんて人も光景も、
  ほとんど見ません。
   
  
  かくいう私も、
  汚れたら拭くとか、
  タイヤに空気を入れる程度しかしません。
  早い話が、
  必要に迫られてするだけです。
 

  昔の方が、
  物を大切にしていたこともありますが、
  何よりの原因は、
  昔は自転車が高かったことでしょう。
  
  
  調べてみると、昭和33年で15,000円くらい。
  当時の大卒初任給の一か月分が12,700円というのですから、
  その高さがわかります。
  考えてみたら、貨幣価値の違う今だって、
  15,000円くらいの自転車ならありますね。
  当時は、自転車が
  お嫁入り道具の一つになれたのも、
  うなづけます。
  
  
  一方、子供用自転車。
  これも昔からあったようですが、
  一般的になりだしたのは、
  昭和30年代後半から40年代。
  本格的に普及するのは、
  昭和40年代に入ってからなので、
  それまでの子供は、
  大人用自転車を乗り回すことも、
  珍しくありませんでした。
  
  
  もちろん、サドルに座ると、
  地面に足がつきませんから危険です。
  でも、そんなのは序の口。
  ペダルにすら足が届かない小さな子供なんか、
  フレームから片足だけを通してこぐ三角乗りという技法で、
  乗りこなしたりしてましたっけ。
  
  
  何もあんな曲芸もどきの乗り方をしてまで、
  乗る必要もなかったろうにと思いますが、
  当時の子供にとっては、
  大人の自転車を乗り回すことができるのは、
  ちょっと誇らしいもんでした。
 
  
  もちろん、
  ドンクサイ私には、
  三角乗りなど夢のまた夢。
  そもそも大人用自転車に乗ることが、
  夢のまた夢。
  だって、子供用自転車でさえ、
  補助輪つきでしか乗れなかったのですから。
  
  
  この子供用自転車、
  3つか4つの頃のお誕生日に、
  買ってもらえました。
  昭和30年代後半になってますから、
  じわじわと子供用自転車が台頭を始めだした時期です。
  本格的普及の始まったばかりの頃に買ってもらえた、
  ということになりますが、
  当時そんな感覚は全くなかったです。
  だって、その頃すでに、
  私の周りで子供用自転車は、
  普通に普及しまくってましたから。  
  
 
  気持ち少し早いので、
  自分の記憶違いかと
  不思議に思ってたら、
  偶然、それを解き明かす興味深い統計を
  見つけました。
  
  
  昭和43年に調べた子供用自転車の所有率なのですが、
  都市部の集合住宅に暮らす子供は、
  すでに所有率が7割近くあり、
  異常に高かかったのです。
  道理で、都営住宅に暮らしていた自分のまわりでも、
  持ってる子供がたくさんいたわけです。
  そのせいか、都市部の集合住宅のデータでは、
  購入理由も遊びのためというのがダントツ。
  
  
  当時の集合住宅といえば、
  ほぼ100%賃貸、
  我が家のように公営住宅ともなれば、
  入居に所得制限もあります。
  そこで、生活必需品ではない子供用自転車の所有率が、
  妙に高かったというのは、
  おもしろい結果です。
  集合住宅ゆえに、周りが持つから自分のところも、
  という風潮があったのかもしれませんが、
  子供用自転車だけが、
  目立った数字になるというのも不思議。
  そのかわり、
  大人の所有率となると、
  一気に下がります。
  
  
  一方、これが地方の一戸建てになると、
  子供用が一番多いことは変わりないですが、
  その所有率は都市部の集合住宅ほどではなく、
  逆に大人の所有率が高いのですね。
  当然、購入目的も、
  遊びより実用が多い。
  

  こうしてみると、
  なんだか、見栄っ張りで子供に甘く、
  軽薄にお金を散在する都市部と、
  堅実で地に足のついたお金の使い方をする地方、
  みたいな雰囲気が漂いますが、
  地方では、自然がたっぷりありますから、
  子供は自転車がなくても、遊びには事欠かない。
  それより、交通機関を補う足としての自転車のほうが、
  ずっと必需品ということで、
  大人の自転車が優先されたのではないでしょうか。
  (見栄っ張りで軽薄が原因でないことを祈る者の、
  根拠のない弁明です。)
  
  
  ともかく、私のまわりで、
  子供用自転車を持ってる子は普通でしたから、
  この統計の証人になれることは確かです。
  
  
  もっとも、この子供用自転車の普及で、
  大人用自転車に挑戦する子供が、
  いなくなってしまったんですけど、
  安全性からいうと、喜ばしいことなのでしょうね。
  また、私みたいに、
  大人用自転車はハードル高すぎのドンクサイ子供が、
  早くから自転車に親しむことができるようになったことも、
  大きな意味を持ちます。


  子供の頃覚えてしまえば、
  一生ものの感覚が身につきますからね。
  おかげで私も、
  自転車だけは、どんなにブランクがあいても、
  心配いりません。
  子供用自転車がなかったら、
  こうはならなかったでしょう。
  子供用自転車様々です。
  

  そうは言うものの、
  その道のりは険しかった〜。
  
  
  小さくなった三輪車は妹たち専用になり、
  子供用自転車になって大人気分。
  しかし、しっかり補助輪つき。
  三輪車から四輪車に降格してます。
 

  しかし、この子供、
  それですっかり満足して、
  いつまでたっても
  補助輪に頼って乗り回してます。

  
  見かねた父が日曜日に、
  補助輪をはずしての特訓を、
  時々行うようになりました。
  補助輪をはずすには、
  工具も時間も必要です。
  そんな手間をかけてくれなくてもいいのにと、
  内心思う子供を尻目に、
  運動神経のいい父はやる気満々です。
  
  
  まずは、父が後ろを押しながら
  とりあえず走る練習。
  慣れたなと思ったところで、
  こっそり父が手を放す。
  子供は知らずに走っている。
  そこで「できるじゃないか」
  
  
  これが父の狙う路線だったようですが、
  ドンクサイ子供は、
  こっそり手を放すと、
  正直にカクッっとなる。
  
  
  こんな日々が
  どれほど続いたのか。
  次に父の考えたのは、
  通常の走りと同じように、
  スピードをあげることで、
  かえって均衡を保てることを、
  体に覚えさせようということだったようです。
  
  
  そこで、すごい勢いで、
  後ろを押しまくった。
  「おとうさん、こわいよ〜」
  「大丈夫だから、そのままこいで!」
  「でも、こわいよ、たおれるよ〜」
  「大丈夫、大丈夫!ほらもっとこいで!」
  そう言いつつ、
  さらにスピードをあげる父。
  いやこれ絶対に倒れるって!
  そう思った瞬間、
  やはりものの見事に倒れこみました。
  
  
  この時のことをよく覚えているのは、
  よほど怖かったから、
  というわけではないようです。
  だってこの後、
  転んだ自分が泣いたのか、
  痛かったか、怪我したのか、
  なんてことはまるで覚えてないのです。
  ただそんなことを言い合いながら走ってた記憶のみが、
  鮮明にある。
  
  
  つまりこれはですな、
  「親の言うことより、
  自分の言うことのほうが正しいこともある」
  ということを初めて知った瞬間ではなかったろうか?
  とひそかに思っている私です。
  
  
  せっかくの父の努力と愛情から、
  こんなどうでもいいことだけを学んでいる、
  しょうもない娘でしたが、
  この特訓のおかげで、
  なんとか自転車の得意な子供になれました。
  普通の運動はドンクサイのに、
  平衡感覚だけは妙にいい子供になれたのも、
  この時の特訓が効いたのかもしれません。
  
  
  亡き父に感謝、そして、
  子供用自転車に感謝です。
  もちろん、昭和の子供、自転車は手入れするものと思ってましたから、    
  子供用自転車だって、見よう見まねで拭いたり油さしたり、
  お手入れしてましたっけ。
  本当に真似事の域を出てませんでしたけど。

  
  しかし気になるのは、
  当時の子供用自転車の価格。
  決して金持ちではない庶民が暮らす都市部の集合住宅で、
  子供用自転車を持ってる子供が多かったということは、
  子供用はそんなに高くなかったのでしょうか。
  
 
  そこで調べてみると、
  昭和30年代後半から40年代にかけての子供用の自転車価格は、
  5,000円台を推移していました。
  当時の所得の増加割合が毎年10%台でアップしていたことと比べて、
  値上がり率がゆるやかです。
  つまり、年を追うごとに、
  買いやすくなっていってたのですね。


  子供用自転車は、
  子供の成長に合わせて、
  1度や2度は買い換える必要も出てくるもの。
  それが一般的に普及していったのですから、
  やはり、大人にとっても子供にとっても、
  いい時代だったようです。
  
  

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    あれこれ後記
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  自転車に乗ってる時の、
  おばさん(世間のレベルで言うとおばあさん世代になるか)たちの、
  おもしろい習性を発見しました。
  
  
  この世代は
  赤信号などで止まるとき、
  自転車から降りる人も多いですよね。
  
  
  この間、そうして止まったおばさんが、
  車が来ないと見計らうと、
  自転車を押したまま、そろそろ歩いて渡り、
  渡りきったところから、また自転車に乗っていきました。
  こういうパターンを続けて見ました。
  無視自体はもちろんいけないことですが、
  どうせなら、最初から乗って渡ってしまった方が、
  早くて安全だと思うのですけど。
  もしかして、歩行者になってれば、
  赤信号無視してても許されるとか思ってる?
  
  
  この話を母にしたら、
  人ごとのように笑っておりましたが、
  後日、母と自転車で出かけたとき、
  このおばさんも全く同じことをしておりました。
  厳重注意しておきました。
  (もちろん、自転車を降りて渡ったことじゃなくて、
   信号無視したことをです。)
  
  
  信号無視することより、
  それに慣れることが、
  いつかは危険を招くと思います。
  信号一つ待てないほどのゆとりがない自分を恥じるくらいで、
  ちょうどいいのです。

  
  だから私、発行する時間がなかなかとれなくても、
  全然あわてませんでした。
              (どっか違う?…ひとみ)
  
  
  
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