「いいとき生まれた!昭和30年代」

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 第102号 割烹着と母親



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        いいとき生まれた!昭和30年代  第102号     


                    2009. 1. 4     


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  お正月は、いかがお過ごしでしたか。
  このたびは、発行が大幅に遅れてしまいましたが、
  別にやる気がなくなったわけではございません。
  なくなったのは時間です。
  

  所用が多くて、ばたばたしているうちに、
  12月に突入、年末の用事も加わって、
  さらに忙しくなり、
  お正月には出すぞと思ったら、
  今度は私の愛用パソコンのパソ吉が、
  正月休みモードになってしまったようで、調子が出ず…
  という按配で、ここまで遅れてしまいました。


  と、不可抗力の理由をあげたところで、
  早速本題に逃げま…じゃなくて、
  入りましょう。


  「鉄腕DASH!」という番組の中で時々やる、
  「茂子の節約家族」。
  城島茂さんが演じる茂子母さんが、
  ドラマ仕立てで、
  節約術や生活の知恵を紹介してくれます。
  茂子さんの旦那は女をつくって逃げたようで、
  時々、感傷に浸ってることもありますが、
  頑張って二人の男の子を育ててます。
  でも、働いている様子もないところをみると、
  養育費としてもらうものはもらっているのかな?


  なんて現実的なことはおいといて、
  この、茂子母さんを見て、
  「こういう母親、昔はたくさんいたなあ」
  と思う人、多いと思います。 


  いや、旦那に逃げられたこと、
  ではありませんよ。
  ぐるぐるパーマに割烹着姿、
  美人でもおしゃれでもなく、
  究極に所帯じみてますが、
  家事と子育てにはきちんと向き合っている母親、
  という意味でです。
   

  「ちびまるこちゃん」のまるちゃんのお母さんも、
  同じような姿で、いつも台所に立っています。
  こういう母親像は、昭和3,40年代までの日本では、
  珍しいことではありませんでしたね。
  
 
  今の子供たちにとっては、
  漫画やドラマの中のことでしょうが、
  当時の日本では、まだ生活の中にあった姿です。


  以前書いた、
  着物とお団子頭のおばあちゃんと同じ。
  そして、割烹着は、
  このおばあちゃんとも切れない縁がありましたね。
  要は、割烹着は、
  昔の日本の主婦、
  ことに母親となった主婦には欠かせないアイテムだったわけです。
  本来は着物のために考案されたものですが、
  洋服の時でも、体をすっぽり覆える割烹着は、
  子育てや家事をするのに便利このうえないもの。


  戦争中には、割烹着に襷がけという格好が、
  国防婦人会の象徴みたいになった、
  という悲しい歴史も、
  くぐり抜けてきた割烹着ですが、
  昭和30年代は、
  徐々にエプロンに押され始めてきた頃でしょうか。    
  普段から着物を着て家事をする人も減ったし、
  電気製品の普及で、家事負担も軽減され始めた時代にあって、
  割烹着ほど完璧にガードしなくても、
  エプロン程度で充分になった、
  ということがあるのかもしれません。
  
 
  また、
  実用重視の結果、
  エプロンに比べると、
  おしゃれでないところが敬遠されだしたことも考えられます。
  昔の割烹着といえば、
  色は白で、襟元は四角というのが定番。
  それが主婦には欠かせないアイテムであったことで、
  良く言えば、主婦らしくなり、
  悪く言えば、所帯じみるところがあったと言えます。
    
  
  それでも昭和30年代には、
  まだまだ割烹着の存在感は健在でした。
  何かの行事で炊き出しなどの手伝いをする時は、
  割烹着がお定まりでしたし、
  普段の生活でも、
  かたくなにエプロンしかしない、
  という主婦は少なかったと思います。
  

  昭和30年代当時はヤングミセスだった母も、
  私が物心がつく頃には、
  ショートエプロンのほうが多かったですが、
  割烹着の時も、けっこうありました。  
  特に寒くなると、暖かくて防寒着の役目も果たしてくれるせいか、
  登場率も高くなりました。
   

  そして、私はこれが、嬉しかったんですよ。
  朝起きて、母が割烹着をつけている日は、
  なんとなく、心が浮き立つというか、
  安らぐというか、そんな気分になったものです。
  いくら、エプロンに押され始めたとはいえ、
  まだまだ割烹着イコール母親像というのは、
  根強い時代ですから、
  無意識のうちに、そのイメージを、
  求めていたのかなとも思います。

  
  もう一つ、
  もしかしたらと思うことがあります。
  エプロン主流の母だったのに、
  私は、割烹着の感触だけは、
  よく覚えているのです。
  

  これは、
  私や妹たちが赤ん坊の頃は、
  母も、割烹着をつけていることが多かったからだと思います。
  赤ちゃん相手じゃ、確かに割烹着のほうが、
  服も汚されないし、何かと便利です。
  妹の時なんて、双子ですから、
  なおのことです。


  そして、ここからは私の憶測ですが、
  割烹着の母親が、
  子供を抱っこしたり、
  おぶったりすれば、
  子供は割烹着を通じて、
  母親に触れるわけです。
  その感触で母と認識していたのではないかと。
    

  これがエプロンだと、
  たとえ胸当てのついたエプロンでも、
  服にあたることも多く、
  必ずしもその感触は一定でありません。
  
 
  こういう記憶が潜在的に残っていて、
  母が割烹着をつけていると、
  安心感とか嬉しさがあったのかなあなんて思うのです。
  割烹着の母には、
  ひっつきたくなったのも、
  納得できます。
  母の方は、
  「なんでこの子は、割烹着を着ると、
   磁石みたいにひっついてくるんだろう」    
  と思ってたかもしれません。
  もっとも、すぐに、
  「ほら、邪魔だよ。家の事ができないじゃないの。」
  とはがされてましたけど。
    
 
  昔の子供は、
  割烹着姿の母親を見ていたからだけではなく、
  その感触からも、
  けっこう影響を受けていて、
  より、割烹着と母親のイメージが定着しやすかったのではないかと、
  思うのです。

  
  もちろん、エプロンと母親だって、
  結びつきます。
  母の日のエプロンのプレゼントは、今でも定番です。
  でも、割烹着ほど、強烈なイメージとはなりません。
  
  
  思うに、エプロンは門戸がどんどん広くなって、
  今では、誰がしても不思議はないものです。
  店員さんだってしてます。
  母親が使うものという点では、
  エプロンのインパクトは、
  割烹着にはるかに劣ります。
  さらに最近は、
  エプロンすらほとんどしないという母親もいるようですから、
  イメージの希薄化は、ますます加速していくかもしれません。 


  また、昔の主婦は、
  割烹着にせよ、エプロンにせよ、
  近所の商店街に買い物に行く程度なら、
  そのまま、買い物かごを持って、
  出かける人も多かったです。
  ですから、外で見かける割烹着姿もエプロン姿も多かったわけで、
  そのことも、母親らしい格好としての認識度を高めていたと思います。

  
  ちなみに、 私の母は、
  今でもエプロンをしたまま、
  自転車に乗って、スーパーに買い物に行きます。
  さすがに、今は、
  そういう主婦はだいぶ減ったし、
  ましてスーパーではなお少ないし、
  衛生的にもどうかと思うので、
  買い物行く時くらいは、
  はずしていきなさいと言いますが、
  「みんなやってる」
  と意に介しません。
  
  
  みんなやってるというのは、
  嘘八百ですが、
  気をつけて見てみると、
  確かに、年配の人中心に、時々見かけます。
  これも、昔の習慣の名残?
  と思って、黙認することにしました。
  
  
  そんなある日、母が近所の医者に行くのに、
  「エプロンはずしていかなくちゃならないから、
   ズボンをはきかえないと。」
  と独り言を言って着替え始めました。

  
  医者に行くので、ズボンをはきかえるというなら、
  まだわかりますが、
  エプロンをはずすからはきかえるなんて、
  おかしなこと言うなあ、
  と思って聞くと、
  「だって、このズボンだと、
  前のチャックが閉まりきらないのよ。
  エプロンしてれば、隠れるからわからないんだけど。」
  
  
  エプロンはずさぬ、本当の理由はそれかい。
  
  
  それ以来、
  外でエプロンつけたままのおばさんを見かけると、
  ひょっとして、おばさんも?
  とあらぬ疑いをかけてしまう後遺症に
  囚われてます。
  皆さんも、感染しませんように。  
  

  あの時代の所帯じみた主婦は、
  年季が入って、ますますパワーアップしています。
  

  それにしても、私たちは、
  まだ割烹着に母親像を重ね合わせることができる世代です。
  割烹着から母親像を連想するのは、
  もはや、古い感覚でしょう。
  でも、私は、それができることを、
  とても幸せなことだと思ってます。
  
  
  だって、一般的に、
  割烹着姿の母親をイメージする時、
  その母親像は必ず良妻賢母になりませんか。
  割烹着の母親の姿から、
  子供を虐待する母、
  家事手抜きしまくりの母、
  なんて姿は浮かんできませんでしょ。


  エプロンでも、
  身につけると、やる気モードになりませんか?
  よりしっかりカバーしてくれる割烹着では、
  さらにそれが高まります。
  割烹着には、実際にやる気を高め、
  自然に良妻賢母になってしまう力が
  確かにあるような気がするのです。
  

  子供の頃から、
  エプロンより優れていて便利な割烹着が減っていくのが、
  不思議だった私ですが、
  一応、その優れた実用性ゆえか、
  今もかろうじて健在ですね。
 

  唯一の欠点である、
  おしゃれ度をカバーしようと、
  今のものは色物、柄物が主流。
  襟を丸くしてみたりと、工夫もされてきて、
  昔ながらの、白で襟元が四角という正統派は、
  限られた用途でしか使われなくなりました。

  
  それでも、まだおしゃれ度では、
  エプロンに負けてしまうかもしれません。
  でも、たとえば所帯じみることとは縁のなさそうな女優が、
  家では割烹着で家事や子育てをしていると言ったら、
  いい意味で、見方が変わりませんか。
  また、割烹着が母親と重なる子供がたくさんいる日本であり続けたら、
  どこかホッとする感じがしませんか。


  それは、私たちが、
  実用性だけでなく、
  割烹着が持っている潜在的な力を、
  体感してきたからだと思うのです。
  そしてそれは、
  忘れてはならない、日本人の宝物なのではないでしょうか。
  

  と言いつつ、私は割烹着をしません。
  似合わないからです。

  
  あ、石投げないで。


  私が似合わないのは、
  別に、私が垢抜けているとかではないんですよ。
  私が母親になってないからです。
  単に年取ったら大丈夫とか、
  そういうものではなかったことが、
  この年になってわかったのです。
  

  割烹着を、
  野暮ったいというマイナスイメージで見ること自体が間違いだ、
  母親となってこそ、本当に着こなせるアイテムだ、
  今、私は心底、そう思ってます。
  割烹着と母親の関係は、想像以上に奥深い。
  そんな気がしてなりません。
  

  


  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    あれこれ後記
  ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
   
 
  
  ◇母は、最近、また割烹着を愛用しています。
   冬のせいもあるのでしょう。
   今は寒いから、
   ズボンの前も開いてないとは思いますけど。
   今、母が愛用している割烹着は、
   昔のような白ではなく、やはり柄物です。
   意外と、エスニック調の柄などは、
   割烹着と相性いいですよ。
   おしゃれな感じです。
  

   でも、さすがにもう私も、
   割烹着姿の母を見ても、
   ひっつきたくなることはありません。
   やはり白でないせい…じゃなくて、
   むろん成長した証。
  
   
   それに、この年になって、
   母に抱きついたら、
   はがされる程度ではすまないですわな。
   速攻で、
   「気持ち悪い!」と突き飛ばされること請け合い。
   
  
  
  
  ◇ふだんウサギ小屋の我が家も、
   暮れの大掃除の時だけは、
   大邸宅に感じられます。
   大掃除って、ありがたや、ありがたや…?
 
  
   暮れのある日、2階の掃除をしていました。
   家具を動かして掃除し、
   ようやくきれいになって、終わった〜と
   ほっとした時のこと。


   掃除に使った用具をかたそうと、
   倒れていたかび取りスプレーを取り上げた時、
   不吉な異変が。  
  
  
   ぎゃー、
   中の液体が、じゅうたんの上にこぼれてしまっている〜。
   しかも、今、元に戻したばかりの家具の下にまで、
   流れ込んでいるじゃないですか〜。
   再び中身を取り出し、
   家具を動かし、ひっくり返し…てな具合で
   せっかくきれいになった部屋が、
   また雑然状態に戻っていくむなしさと言ったら、
   あーた。
  

   しかも、そのじゅうたんは、
   床にはりついているもので、
   洗うどころか、干すこともかなわず、
   ドライヤーとぞうきんと掃除機を駆使して、
   二日がかりで格闘するむなしさと言ったら、
   あーた。
    

   そのかび取り剤は安全性を優先したものだったので、
   無害だったのが唯一の救いだったけど、
   その分、高かったんですよ。
   そんな薬剤を、
   半分以上も無駄にしてしまったこともショックだったけど、
   それより、その日の作業がすべて無駄になったことのほうが、
   よほどショックでござんした。
   まるで、一日かけて作ったファイルを、
   保存しないで閉じてしまったようなもんですな。

  
   これで予定が狂ったことも、
   メルマガ発行が遅れた理由の一つです。  
   (と、さりげなくフォローしているつもりなんですけど、
    もしかして、単に間抜け加減を披露しているだけ?…ひとみ)

  
  
  
  

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