「いいとき生まれた!昭和30年代」

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第32号 お遊戯会の衣装


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         いいとき生まれた!昭和30年代  第32号     


                 2005. 3. 17           


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  幼稚園のお遊戯会の衣装は、
  今は、幼稚園で用意するようですが、
  当時、少なくとも私の通った幼稚園では、
  母親たちが中心になって、
  デザインも縫製もしました。
  
  このことだけでも、現在はなかなかむずかしい状況ですね。
  
  でも、私たちの母親世代というのは、
  ほとんどが、洋服も和服を作れるくらいの
  心得がある人が多いです。
  母親たちの時代は、
  既製品なんてありませんでしたから、
  洋服はオーダーメイドか、自分で作るしかないので、
  裁縫ができることも、重要なことだったからでしょう。
  だから、こんな場合も、困ることはなかったのです。
  
  もちろん、当時だって、仕事を持っている人や、
  お裁縫が苦手な人もいましたが、
  今よりずっと少数派、
  できる人だけで分担しても、
  そんな大きな負担にはならなかったのです。
  
  しかも、その衣装、けっこう本格的なものでした。
  
  3年保育だった私は、年少の時は、
  「すずめのお宿」のすずめ役でした。
  といっても、この劇では、おじいさん、おばあさん以外は、
  すずめしか役がないんですけど…。
  いわば、その他大勢の口。
  
  でも、私にとっては、目立つ役かということより、
  どんな衣装になるかのほうが重要なこと。
  そういう意味では、おじいさん、おばあさん役よりは、
  すずめのほうが可愛いかった。
  すずめと言っても、短めの着物に、
  大きな黄色いリボンを頭につけたものでしたから、
  すずめで満足でした。
  
  年中のときは、お遊戯と劇という2種類の出し物があり、
  ひとつは、きつねの踊り。
  そして劇は、猫とねずみの話。
  あの、猫の首に鈴をつけるって話です。
  でもね、これも、猫以外は全部ねずみなんですけど…。
  
  この猫の役になったのは、クラスで一番背が高かったYちゃん。
  このYちゃんも、3年保育で、年少クラスから一緒でした。
  Yちゃんは、その頃から、なぜか私の面倒をよく見てくれました。
  私が、つい手をかけてしまいたくなる、
  母性本能を刺激するような、可愛い子だったからでしょう!
  (本当のところは、別の意味で、
  こいつは、ほっとけないと感じさせるものが
  あったのでしょうかね?)
  
  実は、Yちゃんは、この幼稚園を経営しているお寺の子。
  お母さんも、この幼稚園の先生をしています。
  しかも、このときは、担任でした。
  
  そういう状況で、
  いくら背が高いからと言っても、
  Yちゃんだけを目立つ役にするのは、
  ちょっとまずいと思ったのか、
  それとも、ねずみばかり多くてもと思ったのか、
  なぜか、この劇では、猫が2匹という設定になりました。
  
  そして、そのもう1匹に選ばれたのが、
  どういうわけか私。
  背も真ん中よりちょっと後ろくらいなのに。
  (ちなみに、背は、成長と共に順調に前へ進出しまして、
  今は小柄族の仲間です。)
  
  ともあれ、今度は目立つ役です。
  でも、例によって、へそまがりの私は、
  嬉しくありません。
  何が嫌かというと、衣装が嫌だったのです。
  だって、顔だけ出た、猫の着ぐるみ。
  
  同じ着ぐるみ風でも、
  みんなのねずみの衣装は可愛いのに、
  なんで、こんなの着なくちゃいけないのよ〜。
  
  この猫の着ぐるみは、先生の希望があったそうです。
  そこで、人形問屋だったうちの父が、
  知っているぬいぐるみの職人さんに、
  その頭部分を注文することになりました。
  もっとも、これはどっちが先だかわかりません。
  
  そんなことまでしてくれるなら、こいつを猫にしてやるか、
  という先生の配慮だったのか、
  猫に選ばれたから、うちの親がはりきって、
  それなら、職人さんに頼んで、
  ぬいぐるみの頭を作ってもらおう、
  ということになったのか。
  
  もしかしたら、親が、
  「お代官様、猫の衣装に着ぐるみをお望みだそうですね。
  うちでしたら、商売柄、ぬいぐるみの職人を知っておりますので、
  頭を作ってもらうことができます。
  つきましては、うちの娘をぜひ、猫に抜擢してくださいまし。」
  「へっ、へっ、へっ、越後屋、
  おぬしもなかなかワルじゃのう…。」
  なんていう、裏取引が、純真な子供の知らないところであったのかも…。
  (あー、万が一、親がこれ読むことがあったら、
  張り倒されるだろうなあ。)
  
  でも、私は、目立つ役をもらえたということよりも、
  この衣装を着なくてはならないということが、
  嫌でたまりませんでした。
  着ぐるみってのも嫌だし、この衣装、なにせ暑い!
  
  このとき撮った記念写真の私は、入園式以来の
  ぶーたれ顔で、猫の頭もひんまがってます。
  着る気がないモード全開です。
  
  一方、もうひとつの出し物の、
  きつねの踊りの方では、
  祭り風の粋な衣装に身を包み、
  満面の笑みでポーズをとってます。
  ほんとに、全部顔に出る、わかりやすい奴です。
  
  しかし、すずめだの、きつねだの、猫だのって、
  人間の役がないじゃないか!
  って思ってたら、年長のときに、
  ようやく人間の役が回ってきました。
  でも、その他大勢組の村の娘。
  でも、衣装はまあまあでした。
  でも、これはこれで、おもしろくもなんともありませんでした。
  だって、このときは、目立つ役にきれいなお姫様役が。
  今年、目立つ役がしたかった〜!
  と思ったものであります。
  
  まあ、幼稚園のお遊戯会なんてそんなものさ。
  
  ところが、2年保育で同じ幼稚園に入った、双子の妹たちは、
  バレリーナとか、雛人形の三人官女とか、
  なぜか素敵な衣装が着られる役ばかり。
  衣装は、私も着たいくらいに可愛いしきれいだし、
  心なしか、母も張り切って、作ってました。
  そりゃなあ、猫の着ぐるみ縫うよりかはなあ。
  
  しかし、こういう衣装まで作らなければならなかったということは、
  けっこう大変でしたね。
  考えてみれば、今に比べれば、母親が子供のために裂く時間は、
  昔のほうが、ずっと多かったと思います。
  おしめ一つとっても、
  紙おむつ世代よりは、ずっと親の手がかかってます。
  
  これを逆に言えば、私たちは、
  それだけ手をかけられて育った、
  ということではないでしょうか。
  
  普段の服にしても、ほとんどが既製品で育った私たちですが、
  手作り服も、今の子供にくらべれば、着ていませんか。
  前号のモチーフのスカートもそうでしたが、
  考えてみれば、スカートやワンピースなどを作ってもらったり、
  手編みのセーターとかカーディガンなども、
  着てました。
  他にも、そういう子はたくさんいました。
  
  私が社会人になったときの同期で、
  いつも母親手作りのワンピースを、着てくる人がいました。
  さすがに、それはもうかなり珍しいことでしたけど、
  でも、うらやましがられていたのは確かです。
  (といっても、この頃は、
  作ってもらえていいなということよりも、
  洋服代が浮いていいなということでしたが。)
  
  これは考えすぎかもしれませんが、
  子供のために費やす時間が多いほど、
  親は親としての自覚が育まれ、
  子供も、その姿をしっかりやきつけることで、
  親への愛情と感謝を、潜在意識に埋め込んでいく、
  ということはないでしょうか。
  
  そして、そういう時間までが削られていくことが、
  今、親としての自覚がない人間や、
  親をないがしろにする人間が増えていることの
  遠因となってるかもしれません。
  
  むろん、忙しい生活に合わせて、便利になっていくことは、
  ありがたいことです。
  親の愛情も、子育てが大変なことも、
  変わりはないことだと思いますし。
  
  でも、今の私たちの感覚では、
  共働きしながら、布のおしめで育てるなんてことは、
  家にいても大変なことなんだから、まず無理だ、
  と感じるでしょう。
  でも、当時の共働き家庭では、そうしていたはずです。
  昔と今では、親からしてもらった手間の差は、
  歴然としているのです。
  
  歌にもあるではありませんか。
  ♪かあさんが、よなべをして、てぶく〜ろあんでくれた〜♪
  
  うちのかあさんは、夜なべをして、手袋は編んでくれませんでしたが、
  忙しい家事の合間に、そういった衣装を縫ってくれたなあ、
  なんてことや、
  何か作っていると、「私の服?」とか期待して聞いて、
  自分の服とわかったときの、ワクワク感とかは、
  いつまでも覚えているものです。
  
  対して、私たちの世代以下は、お裁縫は、
  家庭科でやる程度で、好きでやる人以外は、
  あまり得意ではありません。
  もちろん、私も、編み物は多少興味がある程度で、
  お裁縫なんて、惨憺たるもの!
  (って、いばってどうするさ。)
  
  でも、今の時代、それで困ることはありません。
  
  ところで、この前、書きましたが、
  双子の妹たちの、片方の妹には、
  女の子が二人います。
  
  私たちの時代とは違っても、
  やはり幼稚園や小学校の時にはそれなりに、
  ミシンが登場しなくてはならないものが、
  出たりします。
  
  妹は、そのたびに母親に頼んでました。
  それを見ていた上の子は、
  そういうのは、自分の母親に頼むものなんだと思ったようです。
  そこで、はたと気づいて、尋ねました。
  「お母さんは、おばあちゃんに頼めるけど、
  私たちは、誰に頼んだらいいの?」
  
  ごもっともなことで。
  
  で、ちょっとは反省したのか、妹は、下の子のときは、
  自分で作ってあげようという気になったようです。
  
  ところが、時すでに遅し。
  下の子は、
  「こういうものを作れるのは、おばあちゃんしかいないのだ。」
  と思っているようで、
  「お母さんが作るのなんて、絶対いやだ〜!」

  で、結局また、おばあちゃんに頼むことになりました。
  
  しかし、運動会のゼッケンの端を縫うくらいのことまで、
  おばあちゃんでないと、安心してもらえないとなると、
  さすがに、妹もむきになります。
  どんなに嫌がろうが、このくらいは母がやる!とばかりに、
  泣こうがわめこうが、強引に押し切って端を縫い、
  「ほら、できたでしょ!」
  と見せたら、横目でちらと眺めて、
  「フッ、まあまあじゃん。」
  
  まったく、信用も貫禄もない母親です。

  この子たちは、今はもう、大きくなりましたが、
  この間、この下の子に、
  「お母さんたちのときにはね、幼稚園のお遊戯会の衣装まで、
  おばあちゃんが作ったんだよ。」
  と言ったら、
  「じゃあ、お母さん、おばあちゃんに比べたら、
  ずっと楽してるね。」
  と言われてしまったそうです。
  
  そうですね。
  確かに、まだまだ、育児に手をかけざるを得ない時代に育った私たちは、
  今の子供より、ずっと手をかけられて育ったのですよ。
  
  その分、感謝の度合いが深まりませんか?
  これって、とても幸せなことかもしれませんよ。
  
  

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    編集後記
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   ◇忙しいのはありがたいことですが、前号発行後、
    またまた忙しくなってしまい、間があいてしまって、
    大幅遅配になりましたこと、お許しください。
    一応、不定期発行に戻しました。
    これでまた、期せずして、定期発行になるといいけれど。
   
 
   ◇この間、「和・は・は」の日本の縁起物ページで紹介している
    開運根付を販売しているサイトに行ったんです。
    そうしたら、そこの根付職人さんのページに、干支根付がありました。
    十二支はそろってなかったのですが、
    たとえば、
    いぬの根付は、
    「犬はお産が軽いので、安産のお守りとしても有名です。」
    うさぎは、
    「可愛いので、兎年の人でなくても使えますね。」
    とらは、
    「携帯の上に乗ると、実に可愛い虎になります。」
    ねずみは、
    「親方が得意とする“俵鼠”があり、素晴らしいのでご覧下さい。」
    などのコメントが。    

    私は、昭和34年ですから、いのししです。
    で、いのししもあったので、どんなコメントなのか、
    楽しみにクリックしたら、
    「猪は元気の象徴です。しかし、今増え過ぎて困っているそうです。」
    
    「わるかったな。」
    思わず、つっこんでしまいました。

    ちなみに、いのしし年って、中国では豚年なんですってね。
    日本では、それではあんまりということで、
    いのししになったそうですけど、
    日本に生まれて良かったわ。


                                 (ひとみ)

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